緋色のルシフェラーゼI

緋色のルシフェラーゼ〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

緋色のルシフェラーゼ〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)

 魔王の生まれ変わりである少女が奪われた魔力を取り戻すための指輪の所有者である大好きな年下の少年を守るために戦う話。正直発売前はそれほど注目していなかったのだけど、本屋で軽く目を通してみたら意外と悪くなさそうだと思えて、実際読んでみたらなかなか面白かった。もし主人公が指輪の所有者の少年ならありがちなエロゲー的ハーレム展開にもできたのだろうけど、この作品はその少年のことが大好きな少女の視点から語られるので、むしろショタ的な要素が(笑) おまけに主人公は少年のことを意識してドキドキするほど力を発揮できるとか、ドキドキすると勝手に角が伸びてくるので主人公の心情まるわかりだとか冗談みたいな設定だと思っていたら、後半になると意外とシビアでヘビーな設定や展開もあって驚いた。(以下ネタバレ)繭子はかなり気に入ったキャラであり、今後も仲間として一緒に戦って行くことになるのだろうなと思っていたので、いきなり殺されたのにはショックだった。まあ、どうも今回の終わり方からするとまだ復活はありえそうだけど。地上に生きる全てのものが実は悪魔の生まれ変わりというのもびっくり。やたらと赦免天使が出てきて多過ぎだろうと思ってたけど、こういう事情なら納得。ようするに地上に生きるものならだれでも赦免天使になる可能性はあるってことね。かつての《戦争》の際、悪魔側の指導者だったサタンはどうなったのか気になる。地上に生きるもの全てが悪魔の生まれ変わりというなら、指輪を持っている少年がサタンの生まれ変わりとかかな? 指輪をめぐる争いは1000年に一度の割合で起こっているそうだが、それが本当なら今まで決着がついたことはないということなのか。やはり単純に指輪をもらえればOKって話ではないのだろうな。(以上ネタバレ終わり)物語開始時点ですでに指輪を奪い合う他の魔王と知り合っていたり、戦った経験もあるようだったけど、雑誌の方で短編が先行掲載されたりでもしたのか、それとも最初からシリーズ化前提の作品のようだから、短編集で描くことも見越した上でこうしたのかね。いずれにしても続きが楽しみ。作者はこの作品がデビュー作だそうだけど、どんなペースで作品を出せる人なのか気になる。それなりのペースで新刊を出せる人であってほしい。大当たりを期待するような作品ではないけど、読みやすい文章で手軽にさくさく読めるので、少しは興味がある人なら手に取ってみたら意外と気に入るかも、といった感じの作品。