さよならピアノソナタ

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

さよならピアノソナタ (電撃文庫)

「……少年。ベースってなんだと思う?」
 基本的には良質のボーイ・ミーツ・ガール青春もので非常に満足。先月の『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』に続いて、今月もこんな良質の青春ものを読めるとは運がいい。ちょっとした不満点としては、もっと音楽というかバンド活動が話の中心になってくるのかと思っていたら、重要な要素ではあるけど物語全体の中の一部的な扱いだったことかな。高校に入るまでは特に何もやりたいことがなかったような主人公が真冬や神楽坂先輩との出会いを通してバンドでの音楽に目覚める第11章の流れが非常に良くて気に入っただけに、そのへんがなんとも残念。あとヒロインの真冬とかなり終盤の方まで距離が縮まらないままで、もっとニヤニヤするような恋愛描写がほしかった気が。そういうもっとこんな描写がほしかったという部分があるので、この一冊できれいに完結しているし、無理に続けない方がいいタイプの作品だとはわかっているのだけど、続きがあってほしいと思えてしまう。