赤石沢教室の実験
- 作者: 田代裕彦
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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(以下ネタバレ)
あとがきによると他にもこういう二人称の作品はあるそうで、その作品がどんなものかは知らないが、少なくともこの作品に限っていえば二人称の語り口調を使ったのは失敗だったのではないかと。叙述トリックを使ってるのだなと一発で察しがついてしまう。叙述作品は本来その作品が叙述とわかった時点で魅力が九割以上損なわれてしまうようなものなのに、これじゃあなあ。てっきりあゆみは脳内の別人格に向かって話しかけているように見せかけておいて、実は実際に別の人物と語り合っているというトリックなのかとも思ったが、まさか脳内別思考者は存在し、<僕>一人称を使うものは二人(あゆみの脳内の<僕>も一人と数えるとして)いるなどというたいしたひねりもない真相とは思わなかった。そもそも個人的にこういうミステリで別人格ネタを使うのはどうも好きじゃない。ファンタジーな存在ではない、現実にもありうる症例だとはいうが、ファンタジー存在と大同小異といっていいくらいミステリでは便利というか都合のいい存在になってしまいがちだし。実際この作品も<僕>に頼りたいからあゆみは理解が悪いよう自分で自分を偽っていた、というのはかなり苦しい設定の気が。