イニシエーション・ラブ

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 まあまあ楽しめたのだけど、肝心要の部分が残念ながらそれほど楽しめなかった。
(以下ネタバレ)
「必ず二回読みたくなる」「最後でがらりと豹変する」と評判の作品のようなので、あまりに主人公にとって都合のいい展開に「うわ、いかにもあやしいなあ」とあれこれ疑いながらも恋愛青春ものとしては楽しめたのだけど、期待していた最後の仕掛けはすぐにはぴんとこなくて素直に衝撃を味わえなかった。最後の解説やネットでネタ解説ページを読んでようやくそういうことだったのかとわかり、こんな仕掛けを作ることのできるこの作者の発想と技術はすげえなあとは思うのだけど、何というか心に響かないというか。
 というかこの作品、本来は何の事前情報もなしに恋愛小説として読み進めて、それで最後に「えっ!?」と驚くべき作品なんじゃないかなと。なのに最初から身構えていたせいで素直に衝撃を味わえなかったのかも。そういう意味ではこの文庫版の背表紙の簡単なあらすじや帯のコピーでさえネタバレになってしまっている気が。まあ筆者は某HPで感想を読んでいたので、ただの恋愛小説ではなく最後に何らかの仕掛けがある作品だと文庫を手にとる前からわかっていたのだけど、これからこの作品を読む人は文庫からではなく、余計な予備情報なしにハードカバーの方を読んだ方が楽しめるのではないかと。