千里眼 The Start

千里眼 The Start (角川文庫)

千里眼 The Start (角川文庫)

 3冊同時発売ということで、3冊でひとつの事件について描く上中下巻構成かと思っていたら、次への伏線も描かれているもののこれ1冊で完結しているのね。千里眼誕生の経緯に興味があったので手を出してみたのだけど、思っていたほどたいしたことがあったわけでもなく、もともとそれほど優秀というわけでもなかった主人公が急に人並み外れて優秀になったり自衛隊員になった経緯は恋の一事であっさりかたづけられてしまっているし、人の心を読む能力も訓練したらもともとあった才能と組み合わさって意図せずしてあっさり身についたという感じでしかなくて期待はずれだった。とはいえあいかわらずの読みやすい文章と娯楽作品らしい内容で話は普通に面白かった。あとがきでも触れられているように、もっと臨床心理士という職種について現実的に描いてほしい、身近な問題を解決するストーリーが読みたいと思ったが、このシリーズでは難しいだろうし、もうひとつ別のシリーズを始めてそちらで描いてほしいな。