ウォンテッド


恋人にも捨てられ、人生にうんざりしているウェズリー(ジェームズ・マカヴォイ)。そんな彼の前に突如現れた謎の美女フォックス(アンジェリーナ・ジョリー)は、ウェズリーの亡き父が秘密の暗殺組織をけん引するすご腕の暗殺者だった事実を彼に知らせる。しかも父亡き今、ウェズリーは組織を継承する立場にあると言い……。

 吹替版を観て主人公の声の演技にこりゃ字幕で観るべきだったかと後悔したが、最後まで観終わったらそもそもこの作品を選んだのが間違いだと思うようになっていた。まず先に断っておくとこれはトンデモ暗殺者もの。主人公は心拍数を上げることで超人的な身体能力を発揮できるし、主人公以外も弾丸の軌道を曲げて的に当てたり、意図的に弾丸同士をぶつけあうなどということさえ可能。そこまでならまだしもそういう設定の超人暗殺者ものということで受け入れられないでもないが、主人公は最初こそビビっていたものの平凡な暮らしに嫌気がさしてあっさり暗殺組織に身を投じるバカガキ思考だわ、いざ暗殺者として訓練が始まれば泣き言をぬかすわ、わかっててその道に身を投じたのだろうに暗殺の仕事がまわってくれば僕にはできないとかほざきだすわ、カーチェイスの際に無関係な一般人を巻き込みまくっているくせに正義の暗殺者を気取るわ、仲間の命が奪われたと嘆き悲しんだりするわでツッコミどころ満載。唯一終盤のフォックスが見せた決断の場面だけは弾丸を曲げられるという設定ならではで良かったが、その直後、大声で敵の名前を呼んでわざわざ自分の存在を教えながら敵のもとに向かおうとする主人公のバカな追跡を見せられて台無し。あげくの果てに最後のオチは、結局この作品は主人公の自分探しでしたってなんじゃそら。これがコメディとして描かれていたのならまだしも、大真面目にシリアスな作品として描かれているのだから困る。